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「祖母が料理をする姿」を見て思ったこと
私の原点には、90代になる祖母の存在があります。
大腿骨骨折をきっかけに、歩くことが難しくなり、入院先で「もう自宅での生活は難しいかもしれない」と言われたとき、私は迷わずこう伝えました。
「祖母を台所に立たせてあげたいんです」
多くの方がリハビリのゴールを「歩けるようになること」と捉えます。でも私の目指したのは、“歩けるようになること”ではなく、“料理を続けること”でした。祖母はずっと、家族のために食事を作ってきた人。
その人生の役割を、介護が必要になったからといって終わらせたくなかったんです。
車椅子での移動や立位訓練を病院にお願いし、自宅に戻ってからは、火を使わない調理や、座ったままでできる工程を工夫して環境を整えました。祖母は今も、ときどき家族のために料理をしています。
この時、私は強く思いました。
「人には、自分の人生を“自分らしく続けたい”という願いがある」と。
リハビリ職として関わってきた日常の中で
私は言語聴覚士として、在宅を中心にリハビリに携わってきました。
その中で出会った多くの高齢者の方々が、身体機能の低下や環境の変化によって、「自分が大切にしてきたもの」を少しずつ手放していく姿を見てきました。
もちろん、代行することはできます。
買い物や料理、掃除など、外部の支援によって生活は成り立つでしょう。
でも、その人の「したいこと」や「好きだったこと」を誰かが一緒に行う“同行”の力は、想像以上に大きいものです。
それは自己肯定感となり、「まだやれる」「まだ私はここにいる」という実感を育てます。
この価値は、介護保険の中だけではなかなか提供しきれないものだと感じていました。
「その人らしさ」に焦点を当てる新しい選択肢を
制度外で支援をする、という選択。
それは、社会的にはまだまだ新しい道であり、理解されにくいこともあります。
「何をしてくれるのか?」「何の専門職なのか?」と、よく尋ねられます。
でも私は、“その人らしさを支えること”が本質であると思っています。
長年、家事を担ってきた人なら、これからも役割を持ち続けられるように。
誰かの話を聞くのが得意だった人なら、その魅力を活かして地域とつながれるように。
「本人にとって意味があることを、今の自分でも実現できるように整える」のが私の役割です。
その人の「過去」と「現在」をつなぐ
認知症のある方も、身体が不自由な方も、必ず「その人だけの物語」があります。
過去をたどり、現在と接続する。
その過程の中で、「私は大切にされている」「私はここにいていい」と感じられる瞬間を届けたい。
この気持ちは、私自身が家族の介護を通して強く実感したものであり、
言語聴覚士という職業を越えた、ひとりの人間としての願いでもあります。
最後に:あなたとともに“これから”を考えたい
私は、ただ何かを「してあげる」存在ではありません。
あなたの人生の中で、「もう一度やってみよう」と思えることに寄り添い、
「それなら、私も頑張ってみようかな」と思えるきっかけをつくる、そんな伴走者でありたいのです。
今の時代、支援の形は多様であるべきです。
介護保険の中で補えない部分があるのなら、そこに手を差し伸べる新しい形が必要です。
それが、私のサービスです。
「その人らしく、人生の集大成を穏やかに、豊かに迎えてほしい」
その願いを、これからも丁寧に、ひとつずつ届けていきたいと思います。